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賀川豊彦記念 松沢資料館の学芸員による雑記帳です。仕事上の出来語や、最新のイベント情報などを掲載します。(個人的な見解であり、資料館としての公式な見解ではありません。)
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11/20、午後6:00より、国会議事堂前にある、憲政記念館において、「尾崎行雄生誕150年記念の集い」に出席してきた。世界連邦関係者へという案内状を受けたのだが、尾崎行雄は世界連邦運動の初代総裁であり、また尾崎行雄財団副理事長の相馬雪香さまには、賀川献身100年記念事業東京プロジェクトの顧問にお入り頂いていたという義理もあって、館長、雑芸員ともにはせ参じた。

相馬さんは、国際MRA日本協会副会長を担われていた。資料館ニュース47号の巻頭言をご寄稿頂いている。残念ながら去る11/8、父行雄氏の生誕150年式典を直前にして急逝されたとのことである。
謹んで、ご関係者の皆様に、哀悼の意を表すばかりである。

MRAは、「軍備の再武装ではなく道義と精神の再武装(Moral and Spiritual Re-Armament)を」との、オックスフォード大学のフランク・ブックマン博士の提唱(1938)から、ロンドンにてMoral Re-Armament(MRA活動)として発足している。日本では1975に土光敏夫氏を会長として日本協会が発足している。過去には、岸信介、福田赳夫、中曽根康弘、ほか政財界有力者がMRA運動に関わりを持ち、尾崎行雄財団との協力関係も長い。

オックスフォード・グループと呼ばれる道徳再武装運動が起源だが、もともとは超教派的、宗教覚醒運動、つまりリバイバル運動のひとつであり、提唱者はケズ イック・コンベンションとの関わりもあった。国際的キリスト教運動であって、恐怖、貪欲、憎悪などから解放された世界の建設を目的としていたものである。 しかし興味深いことに戦後の日本においては、こういった元来の福音宣教という脈絡は薄れ、あるいは捨象されて、一般的な倫理運動として、なぜか興隆しつづ けてきた。一般の政財界関係者の積極的な国内、国際的参加が見られたし、もちろんキリスト教徒ではない人(むしろそちらのほうが多いのではないか)でも多 数参加していた。相馬さんもキリスト教徒ではないが、キリスト教に対する、尊敬すべき深い理解の持ち主であった。これをどう見るのか、日本のキリスト教界 は試されるのではないだろうか。

福音と関係なければ、本来の運動とは違ってきているから、無価値だとみてしまうのか。あるいは、信仰から起こされたものだが、いまや一般の多くの人々と社 会にとって有益なものになっているのだから、心から歓迎し協働してゆこうと理解するのか。これはある意味、賀川豊彦の起こした運動との近接性を感じるので ある。
つまり、賀川豊彦の起こした数々の社会運動も、もとは彼の信仰的動機から立ち上げてきた、 宗教的なものであった。しかし時代を経て、宗教的な側面を持たずしても参加するものが増え、そして一般的な広がりを持ってきている。生協さんもそうだし、ほかの事業の多くが、時代の変化と共に、いまや一般的なものとなっている。でもそれは歓迎すべきことであるだろうし、賀川もそう願っているのではないかと思う。

賀川豊彦の周辺には、敬虔なキリスト教徒もいたし、逆に非キリスト者もいた。でもそれらの人々が、違いを超えて同じ、愛と協同に励んできたことを否定する理由は見当たらない。むしろ、賀川の魅力はそこにあったのだと思う。各自あるいはその人の所属する共同体と、その人にとっての他者とその他者が属する共同体との間で、価値観の相違や様々な軋轢や問題は、潜在的にも顕在的にも当然あるかもしれない。しかし逆に共通する価値や大切にすべき事柄を共有すること、すなわち共通善を見出し、意思をもって共有価値として掲げて、協働に参加してゆくことも可能である。選択する自由もあり、選び取らない自由もある。これは、今日の社会、広くは世界の形成において重要なことであろう。賀川のなしてきたことは、今日における、先駆的かつ魅力あるモデルを示してくれているような気がするのである。

尾崎行雄の記念会に参加しながら、相馬さんを偲びつつ思うところであった。

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プロフィール
HN:
賀川資料館 学芸員 杉浦秀典
年齢:
59
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男性
誕生日:
1964/10/06
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博物館学芸員
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