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賀川豊彦記念 松沢資料館の学芸員による雑記帳です。仕事上の出来語や、最新のイベント情報などを掲載します。(個人的な見解であり、資料館としての公式な見解ではありません。)
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午後来客が重なった。一人は大阪産業労働資料館の司書の方で、もう一方は生協さんの新人研修である。
丁度いいので、大阪からわざわざお越しの司書の方には、生協さんの担当者に許可を取って、新人研修のレクチャーにご一緒に出て頂いた。賀川の生涯をスライド(パワポ)を通じて説明させて頂き、その後、館内展示物のガイドをさせて頂いた。14名ほどの新人の方は、興味深く資料を見つめながら、賀川豊彦という人物を学んでおられた。1時間半の研修終了後、丁重にごあいさつをしてお見送りさせて頂いた。新人研修の一環に、資料館見学を入れて頂けるのは、とてもありがたい。生協運動の父と呼ばれる賀川豊彦を、できるだけ多くの生協関係者さんに存じて頂きたい。

その後、大阪産業労働資料館の方との、同業界、同業種としての話が咲くのであるが、彼女のつとめる資料館は財団法人ながらも、その運営費は大阪府がこれまで出してきた。しかしながら、橋本府知事の強行(硬?)な財政再建政策によって、年度半ばにしながらも、公的財源がすべてカットされてしまったというのである。それゆえ、これからは、一民間団体として、寄付者を募らなければならず、大変な状況に追い込まれたとのことであった。




なるほど、これまでも地方自治体財政の立て直しを図る際には、必ずと言っていいほど最初に文化部門が切り捨てられるが、大阪も例外ではなかった。文化的な機関は、生活関係機関と比べ たら重要性が低いとされる。だからそれよりも優先される事項に公費を残そうとする傾向は否めない。博物館や美術館やらの文化部門は、高尚な印象のため、生活関係の機関よりも後回しにされてしまうのだ。自分らで作っておきながら負担になれば捨てるというのが、現行の政策の常道であろう。でも本当にそれでいいのだろうか?

文化は生活資材には直結ではないかもし れないが、人間の営みの記録や過去の出来事などを人々に示し、将来どのような社会をつくろうかという文明的な創造するために重要であることは、誰でも 知っているはずである。文化機関の力は即効性はなくとも、人々の生活を物心両面共に豊にするためには大局的に不可欠なはずである。そういったものが軽んじられ、生産性 とか効率とかのみしか考えないというのであれば、そら恐ろしい世相になりはしないだろうか(すでにはじまっていると感じるが…)。

90年代、自由、平等、効率、安全は、現代日本社会の基本的価値とされたが、同時にすべての局面において正義なのかという疑念がつきまとう。特に福祉が「効率」という価値観から市場に投げ出され、その弊害から生じる現状から、将来に不安を覚える人はは少なくないだろう。文化(歴史・芸術など)までもが市場効率でのみ計られるようになれば、もはや魂なき器官としての社会像しか私には予見できない。公立博物館・美術館は、指定管理者制度の移行がどんどん始まっている。すべてを否定するわけではないが、まだ問題は山積であり改善は必要であるが、財政問題がある限り、理想には程遠いこの政策は避けられないだろうし、これからも続くのであろう。

戦後、賀川豊彦はユネスコの推進をしている。賀川ならこの現状をどう考えるだろうか?
「文化機関の協同組合化を!」 とか、「人はパンのみに生きるにあらず!」 とかと言ってくれるのだろうか…


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プロフィール
HN:
賀川資料館 学芸員 杉浦秀典
年齢:
59
性別:
男性
誕生日:
1964/10/06
職業:
博物館学芸員
趣味:
資料整理、バイク
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