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賀川豊彦記念 松沢資料館の学芸員による雑記帳です。仕事上の出来語や、最新のイベント情報などを掲載します。(個人的な見解であり、資料館としての公式な見解ではありません。)
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昨日、ある会議が行われて、その席で賀川豊彦の協同組合論が話題に出た。以前は読んでもあまり腑に落ちるというものに感じられなかったが、ようやく生協の職員の方々はじめ、協同組合関係者の方との交流が増えてから、目が開けてきた。
せっかく話題に出たならと、久しぶりに明治学院で1968年に再販された、『賀川豊彦協同組合論集』をひっくり返してみる。するとどこも、感銘の連続である。

たとえば、
社会単位運動の章では、「…コーエンは言った『神なくして真の社会主義の完成は不可能だ』…」
ロッジでールの章では、「…かくてイギリスにおける消費組合運動は…自己よりも他人の幸福、大衆の福祉のためという純真愛隣の精神をものがおれば…世界を動かし反省せしめ善導することができる…」

40年以上前の本なのに、どの言葉も新鮮に思えてならない。どうしてなのだろう…

協同組合組織の諸問題には考えさせられる。
「…組合運動は、利益や名誉のために組織せられるべきものではない。それは、愛と奉仕のために組織せられるべきものである。それは世界平和のための解放運動であることをよく心得るべきである…」

面白いのは、協同組合に必要なのは下座奉仕の精神だという。直接引用してみたい。
「組合をつくるときに、まず注意せねばならぬことは、その中核となる人物を選択することである。第一に善人を選ばねばならぬ。ことに、奉仕的人物を中心におく必要がある。この中心人物に信用がなければ、組合は必ず問題を起こす。その次に注意すべきことは、最初の組織運動者が犠牲的精神をもって組織に乗り出すことである。ある東北の医療組合の理事は、はじめから月給を要求した。こうした理事のいるところでは、決して組合は成功しない。組合の理事がはじめから犠牲的なところは必ず成功する。組合の仕事といえば、他人のことと思わず自分の商売のように考え、あくまで責任をもち、損害のあった場合にこれを身に負って行く覚悟ができている中心人物二、三人があれば、組合は必ず成功する。」

賀川ならではの大胆な論だ。なるほど、これまで持続可能な世の協同組合は、単にシステムの点がよかったのではなく、犠牲的な奉仕の精神をもった人物が支えてきたからなのだと、改めて敬服する次第である。「下座奉仕」、一見古くさく感じるが、改めて考えると賀川精神の真髄であって、実に新らしき響きを覚えてやまない。
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無題
なるほど「下座奉仕」。
とはいえ、なかなか実践は難しい。
酔鯨 2010/01/31(Sun)09:10:57 編集
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プロフィール
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賀川資料館 学芸員 杉浦秀典
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1964/10/06
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