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賀川豊彦記念 松沢資料館の学芸員による雑記帳です。仕事上の出来語や、最新のイベント情報などを掲載します。(個人的な見解であり、資料館としての公式な見解ではありません。)
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昨日、ある会議が行われて、その席で賀川豊彦の協同組合論が話題に出た。以前は読んでもあまり腑に落ちるというものに感じられなかったが、ようやく生協の職員の方々はじめ、協同組合関係者の方との交流が増えてから、目が開けてきた。
せっかく話題に出たならと、久しぶりに明治学院で1968年に再販された、『賀川豊彦協同組合論集』をひっくり返してみる。するとどこも、感銘の連続である。

たとえば、
社会単位運動の章では、「…コーエンは言った『神なくして真の社会主義の完成は不可能だ』…」
ロッジでールの章では、「…かくてイギリスにおける消費組合運動は…自己よりも他人の幸福、大衆の福祉のためという純真愛隣の精神をものがおれば…世界を動かし反省せしめ善導することができる…」

40年以上前の本なのに、どの言葉も新鮮に思えてならない。どうしてなのだろう…
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1/23(土)に、東京大学総合研究博物館で開催された「ギャラリートーク&ディスカッション」に参加した。昨年11月の同館専修コースでのワークショップをそのまま展示して頂いている。当日は、資料蒐集者の元東京都学芸員・小田静夫氏から直接資料を入手した際の話を聞いた。これがなかなか面白く、引き込まれてしまった。なるほど資料をこよなく愛しておられるからこそ、語れるのであろう。振り返れば、自分も館内の展示を前にガイドを行っているが、小田先生ほどうまく語っているのだろうかと、ふと自分を知るのが怖く感じた。一般参加者からは展示方法に対して、厳しい意見を頂いたが勉強になった。

トーク終了後は、コース参加者達で担当教授の研究室へ押しかけ、茶をふるまわれる。尽きない笑いを分かち合い至福に浸る。短い期間ながらも、不思議なほど親近感が皆に湧く。夜遅くまでともに汗を流して制作した間がらならではのものだろう。

その後は懇親会へと流れるが、これまた話題も笑いも尽きない。同じ関心をもつから、専門的なことまで踏み込んだ話しができる。日ごろ一人仕事での引きこもり的収蔵庫作業の無言の嵐状態にくらべて、業界の話題を理解しあえる時間が持てた。

先日、かねてよりお世話になっている、渋沢栄一史料館の井上館長さんを表敬訪問させて頂いた。暮れに、アーキビスト・カフェの年末懇親の席で、訪問の意向をお伝えしたのだが、快くお迎えくださった。

当日は一緒に、世界連邦21世紀フォーラムの代表と同じく理事の方も来て下さった。21世紀フォーラムの代表は、11月の賀川シンポジウムでご活躍頂いた木戸寛孝氏で、同氏は明治維新の元勲の家系であり、ご先祖様が渋沢栄一と時代的に重なるせいか、会話は様々な盛り上がりを見せた。

また、もう一人の理事は、job web という企業を経営している佐藤考治氏である。地元王子ご出身で、ご実家の地下に劇場を作り、それ以来今や王子は演劇の街となっている。いわば火付け役の人物である。16日にはPHP新書から出版も予定されている。 http://koji.jobweb.jp/  ぜひお買い求め頂ければと願う。

渋沢栄一翁についてはあまり深く人物研究しては来なかったが、史料館を訪ねてあらためて驚きが多かった。日本の資本主義の基礎を形成した人物としては知っていたが、ただの立身出世した実業家というレベルの人物ではなかった。僭越ながら、利益だけを求める企業をではなく、『道徳と経済の合一』といった、思想と実践を貫徹した、まれにみる大人物としかいいようがない。

若き日には、高崎城のっとりまで計画した、攘夷、倒幕の志士だったようだが、投獄の憂き目から一転、一橋家に仕官し、その後明治期にはヨーロッパ視察後に、株式会社を学んできていた。

賀川が協同組合と社会事業の発展を広範囲に展開したように、渋沢翁は、社会事業と企業を世に発展させた功労者である。ある面、社会事業の発展のために、各種の会社を起こしたとも見られなくはないとのことである。

その懐の広さは測りがたく、キリスト者ではないが、聖路加病院の理事長やYMCAの理事をつとめ、また同志社の設立の際には、資金集めにも協力した。一橋家につかえたことから、商業のための大学作りとして、一橋大学を建て、また女子教育の必要から、日本女子大学の設立に寄与した。数え上げたらきりがないが、何といっても、創設した第一銀行から現在はみずほグループがその系譜であり、王子製紙、日本郵船、東京ガス、商工会議所、帝国ホテル、日本鋼管、札幌麦酒…その数500以上と聞く(列挙しきれなく申しわけないです)。

財閥という特定の集団が富を独占することを嫌いながらも、そうそうたる持続可能な企業をデザイン、創設した。かれの視座は、近代のみならず、現代の市民社会の確立にまで射程をもっていたかのような、破竹の産業興隆とそれに平行して社会事業整備を推進した。かれもまた人間、文化、文明、もろもろの社会のあるべき姿を構想した、グランドデザイナーの一人である。

話上、「なぜいま『坂の上の雲』なのか。日清、日露ではなく、むしろ渋沢栄一をクローズアップする時代ではないか?」 などのところで意気投合した。

明治期の日本には、驚くべき人物が傑出している。混迷する現代、いまこそ学ぶべき人物であろう(もちろん賀川豊彦もだが)

御関心のある方は、ぜひごご訪問頂きたい!

HPはこちら   http://www.shibusawa.or.jp/



成人の日も終わった今頃、「新年おめでとう」とはなんともなさけない。

しかしながら、お読み頂いたみなさまへは、昨年一年間大変お世話になりました。遅ればせながらも、本年も何とぞよろしくお願い申し上げます(ペコっ)。身辺雑記風に、思いのまま近況など少し書いてみたい。

怒涛のような2009年の記念事業も無事終わり、数々の過去の栄光を回想する英雄のごとく、これまでの活動を振り返るこの頃である。が、しかしそのような時間を怠惰という疑念がよぎり、罪悪感に駆られるこの頃でもあった。気分を改めねばならない。

そんな折、ふだん大変お世話になっている、下の松沢幼稚園の園長先生から「ブログどうしたの?」と聞かれて「しまった!」という気持ちと同時に、これを天の声とも受け止め、本日筆(キーボド)を起こすに至る。

この正月は、新たに出版を企画・進行している、教会向けに資料保存を奨励する書籍の原稿に埋没していた。
ようやく世間では、公文書管理法の制定と施行も迫り、文書および記録の重要さの社会的認知が広がりを見せてきた。記録管理や資料管理というのは、アーカイブズである資料館にとってお家芸であることから、この分野の広がりをぜひキリスト教界へ!、という発想から、有志によって「教会アーカイブズ」のお勧めに関する共著を出そうという動きがあるのである。もちろん出版はどういうかたちかはまだわからないが。

自己の担当分にあれやこれやと構想ばかりしているうちに、時間は砂が落ちるように過ぎ、締め切りを破ってしまった。 編集担当者へは大変失礼なことをしてしまった。とにかく集中せねば…

今月は東京プロジェクトの実行委員会が開催される。昨年の12/22で神戸プロジェクトは区切りとして、実行委員会の解散宣言した。東京は3月まで続くのである。まだやり残している仕事はいくつかあり、焦るばかりだ…

一つは、『日本基督教史における賀川豊彦の位置づけ』(仮)の出版である。雑芸員の直接執筆分はないが、館長ほか数名の研究者があらたな書きおろしを掲載する。春ぐらいの出版にこぎつければありがたい。

また、記念事業の報告書もまとめねばならず、これは相当てこずりそうである。覚悟せねば。他に雲の柱の発行と雲柱社三法人の年史編集もあり、踏ん張りどころである。

作秋参加した、東大総合研究博物館での展示の成果を論じ合う機会が通知されてきた。今月23日(土)に、本郷の東大キャンパス内にある、同博物館2Fの特別展示場で開催される。資料を蒐集した方のギャラリートークが行われるので、お時間のある方はご参加頂きたい。

http://www.um.u-tokyo.ac.jp/exhibition/2009SouthernPacific80_gallerytalk.html


最近は当館を利用される団体が増え、特に協同組合関係者が次々来て下さり感謝である。もちろん館としては大歓迎である。研修にもご利用いただいている。こうやってご活用いただいてこそ、当館の意義も立つものだ。


今年こそ腰を据えて、学芸業務に励んでゆきたいと希望に胸を弾ませる新年である。

(さて、庭掃除でもするか…)




 

「エコノミスト」誌に、当財団理事であり、青山学院大学教授の本間照光先生の記事が掲載された。朝、本間先生よりご連絡を頂いた。
52ページから、『 「貧困の時代」に蘇る賀川豊彦の思想 「貧民街の聖者」賀川豊彦の活動開始から100年。その思想が再び見直される時代がやってきた。 』 となっている。
さっそく書店から購入したところ、なんと4ページにわたって、掲載されているではないか!一般週刊誌でこれだけ広いスペースを割いて賀川の記事を扱ったのは、これまであっただろうか。ぜひ、お買い求め頂きたい。
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プロフィール
HN:
賀川資料館 学芸員 杉浦秀典
年齢:
59
性別:
男性
誕生日:
1964/10/06
職業:
博物館学芸員
趣味:
資料整理、バイク
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