忍者ブログ
賀川豊彦記念 松沢資料館の学芸員による雑記帳です。仕事上の出来語や、最新のイベント情報などを掲載します。(個人的な見解であり、資料館としての公式な見解ではありません。)
[115]  [114]  [113]  [112]  [111]  [110]  [109]  [108]  [107]  [106]  [105
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

小生が参与している、アーキビストサポートの関係で、関係者のかたより、メーリングリストで、下記の情報が届いた。これは、米軍の核持ち込みに関する外交文書の欠落に関する問題であり、公文書問題、アーカイブズの問題へと続く、非常に重大な案件であり、「アーカイブズなくして、民主主義なし」という言葉通り、今後も引きつづき問い続けなければならない問題であろう。小生には、一方では外務省がようやく国際連帯税を提起し、様々に関係し始めて下さっている手前、少々複雑な心境である。

決して擁護するわけではないが、このような文書の欠落、紛失問題は、なにも外務省だけの問題ではない。日本の行政全体にかかわる、「文書、記録」への低意識、ひいては日本国全体の文書・記録に対する、これまであまり強く意識されてこなかったお釣りが来ているのだとしかいいようがない。

散りゆくはかなさへ美学を見出す日本人の感性も、それは一面ではすばらしいが、社会や政治に関する公的資料に対しては、理性的な峻別が必要であろう。それよりもこの件で問題なのは、恣意的にせよ偶発的にせよ、公的な記録や文書を廃棄、紛失しても、うやむやで責任が問われない官僚システムでよいのだろうかという根本的なことである。

ここではこれ以上論を広げないが、記録を残す、たとえ都合の悪い文書であっても潔く残す、そういったルール、慣習あるいは社会的な通念などが、日本は諸外国に比べて遅れていると言わざるをえない。だからこそ、この問題を契機に、国民全体が公文書に関して考える、新たなステージを迎えて頂きたいのだ。

記録管理、公文書管理などを、さらに社会へ啓蒙・浸透させるのはもちろんのこと、ぜひ、アーキビスト(資料管理の専門職)の増員を図ってゆく機運が生まれてほしい。アーキビストを養成し、その仕事を要望するような社会となれば、それはすなわち日本の民主主義を深化させることにつながるのだから。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/pdfs/ketsuraku_hokokusyo.pdf

岡田大臣の会見記録

http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/kaiken/gaisho/g_1006.html#3

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
歴史の検証を待つということ
日本の為政者には「自分たちがした政策判断をその後の歴史に検証してもらう」責任という意識が欠落しているのだと思います。
それどころか「秘密を墓場まで持っていく」ことが地位ある人間の矜持のように思われていると思います。歴史の闇の面を知っている人が鬼籍に入るたびにそう言われてしまうことが残念でなりません。
今回初めて公的文書廃棄の事実が明らかになったことは、今後同じようなことをして後年その事実が明らかになることがあるというおそれを官僚に抱かせることができたのではないかと思います。
「情報公開法」ができたのも諸外国に比べれば恥ずかしいほど遅いですし、日本の民主主義を進化させる国民の意識自体がまだまだ低いレベルにあるといわざるをえないと思います。
私の職場でも人事異動で担当者が変わる度に資料が散逸し、歴史的に総括して書かなければならない記述もいい加減になり、長年の間に不正確になってしまっていることが少なくありません。四半世紀に一度年史をまとめるまで放置されないよう、気づいた人間がルールづくりをしなければならないだろうと問題意識をもっているところです。
ぴかちゅう URL 2010/06/25(Fri)01:55:00 編集
同感です!
コメントを頂き誠にありがとうございます。また現在、ご自身が文書・記録等の資料を取り扱われるご関係者であるにも関わらず、勇気あるご発言を頂き恐縮です。
【ぴかちゅう】様のように、問題意識をお持ちの現職者が、さらに増えてゆかれることを願ってやみません。いろいろしがらみの多い日本的和の社会だと思いますが、どうかそれらから脱却して、記録・文書を残す社会を目指す、意識改革を啓発し続けて頂けたら幸いに存じます。
僭越ながらも小生が思うに、たとえば公務員の新入職員の式典での薫陶には、「あなたたちの作成し残した文書が、将来アーカイブズに移管され、歴史資料として取り扱われる日が来るかもしれない。その時に検証されても恥ずかしくないよう、法令遵守と誠実な職務遂行だと評価されるような文書を残せるよう、精一杯心がけて頂きたい!」などと言われるような時代にならないでしょうか…(生意気申してすみません…)

是非、次回のアーキビスト・カフェにもご来場下さい!今後ともよろしくお願いいたします!
雑芸員 2010/06/28(Mon)10:12:21 編集
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
カレンダー
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
フリーエリア
最新コメント
[05/17 Backlinks]
[02/28 雑芸員]
[02/27 荻田(長尾)香世子]
[08/31 N. F]
[11/19 雑芸員]
最新トラックバック
プロフィール
HN:
賀川資料館 学芸員 杉浦秀典
年齢:
59
性別:
男性
誕生日:
1964/10/06
職業:
博物館学芸員
趣味:
資料整理、バイク
バーコード
ブログ内検索
Copyright © 賀川資料館 学芸員のひとりごと All Rights Reserved.
Designed by 10p
Powered by Ninja Blog

忍者ブログ [PR]